「自閉症の子育て、これからどうしたらいいの?」このような悩みを抱えていませんか?
医者から自閉症の診断を受けて「まさかうちの子が自閉症…」と不安になる方も多いでしょう。
私の息子も3歳のときに自閉スペクトラム症と診断されて、どう受け止めればよいか戸惑った気持ちが今でも忘れられません。
この記事では、自閉スペクトラム症の基礎知識から子どもとの効果的な接し方まで、私自身の経験を交えて紹介します。
自閉症をしっかりと理解することは、今後の子どもの成長に大きく関わってくるため非常に大切です。
診断を受けても決して恥ずかしいことではなく、適切な支援のスタートです。
この記事を読めばお子さんが自閉症と診断されても、落ち着いて対応できますので参考にしてください。

自閉症の子育てを始める前に知っておきたい「自閉症」とは?

自閉症は発達障害に分類されています。
発達障害を診断する際には「DSM(精神障害の診断マニュアル)」という世界的な基準を用いることが多いです。
改訂を重ねた最新版の基準は「DSM−5」です。
発達障害は3つに分類できます。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 学習障害(LD)
- ADHD(注意欠如・多動性)

自閉スペクトラム症とは何だろう?
私も担当の小児科医に、息子が自閉スペクトラム症だと言われたとき、理解できず戸惑いました。
自閉スペクトラム症とは「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を統合した名称です。
「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」は、明確な判断が専門家であっても明確な判断が非常に難しいことから「自閉スペクトラム症」という名前で1つにまとめられました。
それぞれ異なる傾向があるため、確認しましょう。
症状 | 自閉症 | 高機能自閉症 | アスペルガー症候群 |
コミュニケーション | 非常に困難 | 困難 | 少し困難 |
言葉の遅れ | ある | ある | ない |
知的障害 | ある | ない | ない |
こだわり | ある | ある | ある |
「人とのコミュニケーションにおいて、苦手さや困難さがある」
「こだわりの強さや、感覚の偏りがある」
2つの特徴から他者とのコミュニケーションがうまくできず、「うつ病」「不登校」「引きこもり」などの二次障害を引き起こす可能性が高いです。
日本では自閉スペクトラム症・学習障害・ADHDを脳機能の障害と定義つけていますが、発達障がいは生まれつきの脳の特性で、病気ではないという考え方もあります。



私も我が子を見ていて障がいではなく、息子の特性だと感じています。
子どもの特性(個性)だと考えれば、前向きな気持ちになれるでしょう。
自分の子どもが発達障がいだと診断されても、どういったものなのか親がしっかり理解することが大切です。
自閉症の子育てに役立つ!自閉スペクトラム症の特徴


自閉症の特徴と判断基準をしっかり理解することは、子どもを育てるうえで大切です。
自閉スペクトラム症(ASD)は人によって現れ方がさまざまで、子育てにおいても戸惑うことがあるでしょう。
ここでは、自閉スペクトラム症に見られる主な特徴についてわかりやすく解説していきます。
自閉スペクトラム症の特徴
- コミュニケーションの苦手さ困難さ
- こだわりの強さや感覚の偏り
私の息子も2つの特徴で苦しんでいる部分があり、悩んでしまうことがあります。
私たちの経験も踏まえて説明していきますね。
コミュニケーションの苦手さ・困難さ
自閉スペクトラム症は、決まりごとやルールをうまく理解しづらい傾向があります。
私の息子も幼稚園のときに、みんなが鬼ごっこをしている際に1人で遊んでいたことがありました。



あとで話を聞くと、遊び方がわからないから一緒に遊べないと言っていました。
現在は小学生ですが、体育の授業でサッカーやドッジボールといったルールのあるものになると混乱するためか、体育の授業はつまらないと言っています。
子どもが悪いのではなく自閉スペクトラム症の特性の1つなので、親も理解して対応していかなければいけません。幼稚園・保育園、学校の先生たちにも子どもの特性をしっかり理解してもらうことが大切です。
こだわりの強さや感覚の偏り
私たちは五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を通じて、さまざまな情報を得たり、外界を感知したりしています。
自閉スペクトラム症のなかには、感覚過敏のため強い刺激がストレスにつながる子どもがいるのです。
感覚過敏の具体例は以下のとおりです。
- 視覚過敏
多くの物のなかから、一つの物を見つけ出すことが苦手。蛍光灯のちらつきが気になったりする。 - 触覚過敏
洋服のタグや、靴下や肌着の縫い目、靴に入った砂などを嫌がる。 - 圧覚過敏
やさしく抱きしめても窒息するような強烈な圧迫を感じる。手を握るだけで強い痛みを感じる。 - 聴覚過敏
大きな音を嫌がる。大きなサイレンや、突然大きな声を出されると耳をふさぎ周りをシャットアウトする。 - 嗅覚過敏
強い匂いが苦手で場合によっては吐き気を催すことがある。通常ではよい匂いでも、非常につらいと感じることもある。 - 味覚過敏
一般的な味付けを濃く感じて薄味の物だけ好む。特定の食材や食べ物を好んで食べ続ける。
私の息子は触覚過敏・聴覚過敏・味覚過敏を訴えることが多いです。
感覚過敏の特徴を知っておかないと、なぜ子どもが過剰に反応するのか理解できず自分目線で考えてしまいます。



診断を受け始めた当初、私は息子の特性をきちんと理解できていませんでした。
そのため、タグがかゆいという訴えにイライラしたり、偏食に対して強く叱ったりすることがありました。
この記事を読んでいるみなさんが同じことをしないように、自閉スペクトラム症の特徴について理解を深めてください。
自閉症の子育てに知っておきたい判断基準


幼少期に現れる発達障害の特性は年齢によって異なるため、傾向を紹介します。
あくまで目安であり、絶対にこの年齢で特性が見えるわけではないため注意してください。
0歳〜3歳の判断基準
0歳〜3歳で現れる自閉スペクトラム症の疑う特性は以下のとおりです。
- 表情が乏しい
- あまり笑わない
- 目が合いにくい
- 初語がかなり遅い
- ほとんど泣かない
- 指した方向を見ない
- 些細なことでも激しく泣く
- 名前を呼んでも振り返らない
- 抱っこをすると体をのけ反る
- 夜中ちょっとした物音ですぐ起きる
複数該当し、気になる場合は一度検診を受けることをおすすめします。
発達障害は特性が現れている期間がどのくらいなのかが重要です。
基本的には「6か月以上継続しているか」という指標があるので、あまり小さい時期では確実な診断ができないため注意しましょう。
4歳〜6歳の判断基準
4歳~6歳になると、幼稚園や保育園に入り集団生活をするようになるため、診断が下る可能性が高くなります。
次の特性が見られるかどうかチェックしましょう。
- 順番を守れるか
- ひとり遊びしかしない
- 集団行動に適しているか
- 遊びや園のルールを理解できない
- 友達に「貸して」などのひと言がいえない
- 体育や音楽発表会で周りに合わせて行動できているか
自閉スペクトラム症の特性が6か月以上見られる場合は、集団生活に適応できていないと判断される場合があります。
保育士に相談するなどして、受診するか判断しましょう。
よく子どもを見てくれる先生が診断を勧めてくれる場合もあります。
自閉症の子育てで大切な子どもとの接し方


自閉スペクトラム症の特性がわかったところで、次は私が息子と関わるときに注意していることを紹介します。
実際にやってみて「これはよかった」と感じた接し方なので、具体的にどう関わればいいのかがきっとわかると思います。
- 根性論はやめる
- 説明は具体的にする
- 視覚的にわかるようにする
- 肯定する言葉をできるだけ使用する
- あいさつにひと言添えて会話を広げる
根性論はやめる
私は息子が自転車になかなか乗れないので、無理に練習させてしまうことがよくありました。



練習中によく言っていたのが「練習しないといつまでも乗れないよ!」です。
部活や仕事で根性論を信じて頑張ってきた私は、子どもにも押し付けていました。
自閉スペクトラム症の子どもはこだわりが強いため、何かひとつのことにのめり込めば集中して取り組みます。
無理やり練習させるのではなく、本人がやると言ったときに褒めてあげながら練習に付き合ってあげましょう。
私の息子は「自転車は嫌い」と言っていたのに、気づけば乗れるようになっていて、今では自転車が大好きになっています。
根性論は興味を失わせることがあるため、押し付けず興味を持ったときに導く方がうまくいきますよ。
説明は具体的にする
自閉スペクトラム症は抽象的な説明をされるのが苦手です。
着替えがどこにあるかわからない息子に「あそこにあるでしょう」と言っても、本人は「あそこってどこ?」となります。
逆に具体的に説明をしてあげると理解をしてくれます。
強く感じたのが、息子と紙飛行機を作って遊んだときのことです。
作った飛行機がたまたま上に向かって飛ばすとうまく飛んでくれたので、息子には最初このように説明しました。



パパは上の方に向かって投げたらうまく飛んだよ!



上って?
上をよく理解できていないこと+上だけで紙飛行機を離すタイミングが掴めず癇癪を起こしそうなったので、こういう表現で伝えてみました!



お空に向かって投げてみようか?
具体的かつわかりやすい表現で伝えると、しっかり上に向かって投げられたため、そこからは楽しく紙飛行機で遊べました。
上・下・右・左など、私たちが当たり前のように使っている表現でも、発達障害の子どもには伝わらないことはよくあることです。
そこでイライラして「右よ!なんでわからないの!」と怒るのではなくて、「〇〇がお箸を持つときに使っている手の方だよ」と伝えてあげれば、子どもにも伝わりやすい表現になります。
視覚的にわかるようにする
具体的な説明をするために、視覚的にわかるようにすると伝わりやすいです。
服を着替えるときに「服を入れる棚に〇〇の服があるから、ちゃんとお着替えして!」と言っても、自分の服がどこにあるのか理解できていないため服を見つけられません。



棚の引き出しに何かが入っているのかわかるようにイラストや写真などを貼ってあげると、何が入っているのか明確になり不安なく自分で服を取り出せます。
また「遊ぶ部屋」「勉強する部屋」「寝る部屋」というふうに、ここは何をする場所かを明確にした方がいいです。多目的な部屋で「何をしてもいいよ!」と言うと、不安になりパニックになってしまうこともあります。
視覚で何があるのか、何をする場所なのかが明確になることで精神的に安定し、行動しやすくなるのです。
肯定する言葉をできるだけ使用する
相手に行動を促したいときは、否定語ではなく肯定語を使うことが効果的です。
否定語で注意されると子どもは感情的になりやすく、素直に受け入れられないことがあります。



「だめ」と言われ続けることで、自分を否定されたように感じ、自己肯定感が下がるため注意してください。
肯定語を使えば、安心感を持ったまま行動を見直せるため、子どもの自己肯定感が育まれます。
今から2つの質問をします。
どちらの言われ方がいいかみなさん考えてみてください。
- テレビを近くで見ちゃだめ!
- テレビを見るときは離れて見た方がいいよ!
1の方は否定していて、2は肯定しているのがわかると思います。
否定語を言われるとイラッとしてしまいますが、肯定語で言われると感情的にならず行動を改められます。
また、なぜ近くで見てはだめなのかを説明してあげるといいですね。
子どもに伝えるときは、否定語で強制するのではなく、肯定語でやさしく促すことが大切です。
子どもの行動改善だけでなく、自己肯定感の育成にもつながります。
あいさつにひと言添えて会話を広げる
あいさつはコミュニケーションの基本です。
コミュニケーションが苦手な自閉スペクトラム症の子どもには、あいさつを自然にできるようになることが苦手克服の一歩です。



朝起きたときに、ただ「おはよう!」と言うのではなく、子どもがあいさつをしてくれたら「おはよう!気持ちのいいあいさつだね」とプラスαで声をかけてみましょう。
ごはんを食べるときは「いただきます!今日は〇〇の好きな唐揚げだね」など、あいさつから自然にコミュニケーションへつなげる工夫がおすすめです。
あいさつにプラスαを受け取った相手は、ほとんどの場合快く回答してくれます。会話の糸口になるので、あいさつプラスαは大切です。
- 親が近所の人にあいさつをしていないのに、子どもがあいさつするでしょうか?
- 夫婦喧嘩をしたときに親が「ごめん」と謝れないのに、子どもが友達と喧嘩して素直に謝れるでしょうか?
子どもは親の背中を見ています。
親が普段からあいさつにひと言添えて声をかけていると、子どももまねして自然にできるようになります。
自閉症の子育ては理解することから始めよう!


今回は自閉症の子どもを育てるために必要な知識について記事を書きました。
自閉スペクトラム症は「コミュニケーションの苦手さ」と「こだわりや感覚の偏り」が特徴的な発達特性です。
私の息子の場合、異変に気づいたのは妻でした。
妻から相談を受けたていたのですが、正直当時の私は自閉スペクトラム症への知識もなく「子どもの成長は人それぞれ、心配せんでも大丈夫よ!」と軽い感じで流してしまっていたのです。
登園しぶりなどがあった際も根性論を押し付けて「ちょっと甘えているだけ。大丈夫よ!」と言い聞かせていました。



今思えば心のどこかで、息子に障がいがあることを認めたくなかったのだと思います。
お子さんのことで不安や悩みを感じたときには、子どもを1番近くで見ている母親の判断を尊重しましょう!
もちろんパパが育児をメインにしている家庭の場合は、パパの判断になります。
私は検診にいくことを躊躇していたため診断してもらうまでに時間が掛かってしまいました。
心配であれば迷わず検診を受けてください。
自閉スペクトラム症の診断がされなければ安心して子育てができます。



自閉スペクトラム症の診断が下ることは決して恥ずかしいことではありません。
自閉スペクトラム症の診断が下ることは決して恥ずかしいことではありません。
むしろ子どもを守ることにつながります。
「もしかしたらうちの子は自閉スペクトラム症かもしれない」と考えることで、トラブルを未然に防ぎ、診断されても落ち着いて受け入れられます。
親の理解が深まれば、子どもの成長を適切にサポートでき、自己肯定感を育めるでしょう。
今回の記事が自閉スペクトラム症の子育てをしている、親御さんのお力になれば幸いです。